「朱里、忘れ物ない?」
「んー、多分大丈夫」
「朱里ちゃん、お土産忘れないでね!」
「はいはい。じゃ、いってきます」
6月終わり。
2泊3日の修学旅行当日。
大きなキャリーバックを持って、
学校に向かった。
行き先は沖縄。
初めて行くから
ドキドキ、わくわく。
「朱里ーっ!」
集合場所で先に待っていた
恵衣と麗華。
「ごめん、遅れた」
「荷物はあそこだよ」
そう言ってバスの添乗員さんに渡す。
そして、恵衣たちのクラスと
合同のバスに乗り込むことに。
中に入ってみると、
どうやらこのバスでは
あたしたちが最後だったらしく。
前の方しか空いてなくて。
「あら、丁度良かった」
恵衣たちのクラスの担任の森先生が、
嬉しそうに声をかけてきた。
「先生バス1人で乗るの寂しくて。誰か隣に来ない?」
そう言われて、3人顔を見合わせる。
「関根先生も、寂しいらしいのよ」
そう言われて、関根は。
「あなたと一緒に座るくらいなら、1人でいいって言ったんですよ」
と、冷たく言い放った。
関根と森先生は公認の犬猿の中。
そのやり取りは、結構面白いけど。
「どうする?」
そう話していると。
横から突然。
「麗華、来るか?」
と、関根が言った。
それを聞いた恵衣は。
「じゃああたし、森先生の隣っ」
そう言って、何も考えずに座っていった。
そうか、恵衣はまだ何も
知らないのか。
麗華の気持ちを知ってるあたしは、
1人にやけが半端なくて。
「行ってあげてもいいけど」
なんて言う、麗華の
ツンデレな態度もまた可愛くて。
何だか、関根も、
まんざらじゃないような気がして。
あたしは他人事ながら、
すごく嬉しくて仕方なかった。



