ぽつん、ぽつん、と
街灯が照らす中。
あたしと十夜は手を繋ぎながら、
静かに歩く。
こんなに幸せでいいのかなって。
そう思う。
指先から想いが伝われば
いいのにって。
そんなことまで、
考えちゃう。
「修学旅行、楽しみだね」
「まあな」
「お土産、買ってくるね」
「俺も行くんですけど」
他愛な会話。
「夜ご飯、何かなぁ」
「食うことしか頭ねぇのかよ」
「だって美味しいの食べたいもん」
「子どもか、お前は」
なのにこんなにも、
心が満たされる。
暗闇だけの繋がる手、じゃなくて。
いつも繋げる関係になりたい。
そうなるためには、
どうしたらいいかな。
どれだけ十夜を、
想えばいいかな。
「また明日な」
「うん。ありがとね」
玄関前で、
向かい合えば。
「じゃ」
「うん」
名残惜しくて。
寂しくて。
抱き締めたくて。
去って行く背中に、
手を伸ばした。
届かないあたしの手が、
後どれだけ頑張れば
届くのか。
想いはいつか届くのか。
そんなことばっかり考えて、
なかなか家の中に入れなかった。
だって、2人でいたこの空を、
ずっと見ていたくて。
去って行く十夜が、
戻って来るんじゃないかって。
そんな淡い期待をして。
「ママー、朱里ちゃん外にいるよ」
そんな声が聞こえる。
玄関を見ると、
夕里があたしを見つけて
大声を出した。
「うるさい夕里」
「朱里ちゃん、さっきの誰?」
見られた、と焦り。
「夕里、修学旅行のお土産何がいい?」
と、話を逸らすことで精一杯で。
無邪気にはしゃぐ夕里を見ながら、
邪魔すんなよ、と
心の中で突っ込みを入れた。



