雨のち晴







それから学校に戻り、


関根にお弁当を渡すと。


お前ら俺を分かってるな、と


ご機嫌でお弁当を完食した。


いつも肉肉言ってんだから、


焼肉弁当にすればいいんじゃね?って、


十夜が言った。


あたしはそれを、


1秒もかからず賛成した。






「よーし、今日の所はここまでにしとくか」





お弁当を食べてから、


少し作業をして今日の仕事は終わった。


片付けをすると、


とっとと職員室に帰って行く関根。


あたしたちも帰る用意をし、


足早に玄関へ向かった。






「送ってく」





「え、いいよ。反対方向じゃん」





「いいから。行くぞ」






十夜はそう言って、


あたしの家の方に向かって歩いた。


里菜ちゃんと別れた今。


諒司先輩と別れた今。


もう何にも遠慮することはない。


だけどまだ、踏み込めずにいる。


あの日の。


文化祭の日の、十夜の口から出た、


ごめんの一言が。


今でも胸に残ってる。






「ほら、早く来いよ」





考え込んだあたしは、


思ったより歩くのが遅くて。





「ごめん。待っ…」





追いつこうと思って、


つまずいて。


かっこ悪く、膝から地面に


ダイブした。






「痛ったぁ…」





体操座りをして膝を見ると、


うっすら血が滲んでいて。





「ばか」





十夜はあたしの元まで


戻って来て。


カッターシャツの袖で


血を拭ってくれた。





「あ、血がっ…」





「手だとばい菌入るから」





とくん、と。


胸が高鳴る。


顔を上げればそこには、


十夜がいて。







「ごめん、十夜…」





「ばーか」





罵られているはずなのに、


嬉しくて。






「もう大丈夫だから」





「どじ女」






十夜はそう言って。


あたしの手を握って立たせると。






「嫌だったら振り払って」





そう言って手を繋いだまま、


再び歩き始めた。