「…ごめん」
やばい。
鼻の奥がツーンとしてくる。
十夜が怒るなんて、
あまり見ないから。
だから怖くって。
怒らせたなら申し訳なくて。
だけど、だけど。
「何で…」
十夜が怒ってる理由が分かんなくて。
思わず泣いてしまった。
泣くほどのことじゃないのに。
これがあたしのいけない所。
直したいのに、
直らない所。
「朱里」
「…」
「朱里」
「……」
授業中。
横からかけてくる、
武井くんのちょっかいを。
あたしは初めて無視をした。
心の中は、
申し訳ない気持ちと。
腹立つと言われた十夜の言葉で、
ぐるぐるしていた。
「朱里、帰りどっか寄ってかない?」
次の日の放課後。
来海に誘われ、
残らなきゃいけないことを伝える。
帰って行く来海の背中を見送って、
はぁと机に伏せる。
今日も十夜と話せなかった。
一緒のクラスになったのに、
十夜と話せない。
しかも今怒ってるし。
誰もいない教室で、
そんなことを考えてると。
「お前まだいたの」
と、武井くんが入って来た。
あ、うん、まあね。
そう言葉を濁すと。
武井くんは、いきなり。
「朱里」
そう名前を呼んで。
あたしの顔を両手で掴んだ。
「泣くの?」
「え…?」
「胸、貸すけど?」
思わず、
ドキッとしたのは内緒。



