「教室、来てよ」
「は?」
「だから、教室に」
そう言うと武井くんは。
ふっと笑って。
「来て下さい、だろ?」
「はっ、何…」
ほら言えよ、みたいな。
そんな顔をしてあたしを見る。
「言ったら教室行かねーこともないけど?」
悔しいけど、
武井くんは綺麗な顔をしていて。
騙されちゃいけないと
分かってても。
かっこいいと、
少し思ったりして。
「来て…下さい」
「どこに?」
「教室に」
「教室に?」
何だろう、こいつ。
究極のドSだ。
「教室に来て下さい」
「しゃあねぇな」
こ、の、や、ろ、う。
殴りかかりたい衝動を
ぐっと我慢する。
押さえろ、自分。
こんな奴、相手にするな。
そう言い聞かせて、
先に保健室を出た。
「お、春斗。やっと来たか」
「朱里が来て下さいって懇願するもんだから」
な?と。
あたしに向かって問いかける。
あたしは悔しくて下を向く。
っていうか、朱里って。
もう呼び捨てにしてるし。
何、まじで。
自由すぎる。
「朱里ちゃん、どこ行きたい?」
「んー…お土産買える所行きたいなぁ」
同じ班の来海(クルミ)と行きたい所を話す。
もう1人の松本くんは、
優しいから、女子の行きたい所に
行けばいいと言ってくれる。
「武井くんはどこ行きたい?」
来海がそう聞くと。
「別に、来海が行きたい所行けばいいよ?」
なんて言うくせに。
「じゃあお土産見にいこっか」
そうあたしが来海に言うと。
「朱里のはない。却下で」
なんて否定してくる。
は、何それ。
来海には優しいくせに、
あたしには意地悪いことを言う。
本当、この男性格悪くて嫌だ。



