「あのさ、武井春斗…いる?」
「いるよ。奥で寝てる」
奥かよ。
めんどくさっ。
「関根に連れて来いって言われたの」
「あ、本当?じゃあ連れてってあげて」
それだけ言うと、
パソコンに向かう。
そして思い出したように
立ち上がり。
「ちょっと職員室行くから。春斗くん連れてってね」
「え、ちょっ…」
勢いよく保健室を出るフジ子ちゃん。
あたしはいつも1人にさせられる。
ってそんなことを言ってる場合じゃなくて。
「武井くんいますかぁ~?」
カーテンの隙間をそーっと覗く。
そこには4台のベッドが並んでいて。
1番奥に寝ているのを確認した。
「武井く~ん…起きてぇ」
遠くから声をかけてみるけど、
なかなか起きない。
起きる気配もない。
意を決してベッドに近付き。
「武井くん、武井くん」
そう言って布団を突いた。
すると、んーっと唸り声が
聞こえて来て。
「あの…武井くん?」
そう声をかけると。
「何、お前」
そう一言返って来た。
何、お前って。
顔も知らないのか、と。
一応クラスメイトなんだけどな、と。
がっくりしながら、再び
声をかけてみる。
「修学旅行同じ班なの。高原朱里です。よろしっ…」
く、が、言えなかった。
なぜなら、いきなり。
あたしの腰を掴んで、
引っ張り込んで来たから。