外が真っ暗になった頃。


ようやく体が動いて、


教室に戻った。


教室のは案の定真っ暗で。


なのに廊下から足音がして。


びびりまくってる俺は、


固まって動けなくて。


ゆっくり振り向いて


廊下を見ると。


いきなり誰かが教室に入って来て。


よく目を凝らして見ると。


間違えるわけがない。


そこには、朱里が立っていた。





「何してんだ、お前」




そう言うと、


驚いたのか、


朱里はどもっている様子で。


足音の正体が朱里だと分かって、


安心した俺は廊下に向かう。


朱里の隣を通り過ぎて、


ドアの前で止まる。





「あたしは関根と面談。でも雑用してて遅くなっちゃって」





ふと、さっきのことを思い出して。


丘谷の言っていた、一言一言が


頭を駆け巡る。


朱里は苦しんでる。


本当は他の誰かを想ってる。


一体誰を?


俺であれ、と願う一方で。


これっぽっちも確信はなく。


ただイライラする。


だから、とは言わない。


だけど。


無性に朱里を抱きしめたくなって。


俺の横を通り過ぎる朱里を掴んで。






「朱里」





ただキスしたかった。


友だちの一線を越えたかった。


朱里の気持ちなんか考えず。


勝手な俺の気持ちで、


勝手に朱里にキスをした。





「十…夜、」





「ごめん」





朱里、お前は。


お前は俺のこのごめん、を


どういう意味で捕えた?


キスをしてごめん、なんて


言ったつもりはない。


今まで守れなくてごめん。


傷付けてごめん。


これからは俺が、


守るから。


そういう意味の、


ごめんだったんだぜ。


って、分かるわけねーよな。