雨のち晴






「じゃあな」





「おう、また明日」





先に帰れと言ったのに、


俺のことを待ってた2人と


別の道を歩く。


家に帰りながら、


ただぼーっと。


空を眺めた。


あーあ、俺が。


俺がもっとちゃんと朱里を


守ってやれてれば。


そしたら中山も石黒も


悲しませずに済んだのに。


後悔しても遅ぇけど。


どうしても悔やんでしまう。





「最低だな、俺」





なんて呟いた時。


ポケットに入れていた携帯が、


震えた。


何も考えずに取り出し、


ディスプレイを見ると。






「何で…」






朱里、という文字が並んでいた。






「朱里?」






『十夜…』






泣いているのか、


少し声が震えている気がする。


何も言わない朱里は、


きっとすごく心細いと思う。






「体、痛んでないか?」





『ん、大丈夫だよ』





「もう家か?」





『もうすぐ着くよ』





一問一答で、答える朱里は。


無理矢理明るくしようとする。


俺はもう愛しくてたまらなくて。


朱里に会いに行こうと。


踵を返した。






『十夜…』





「ん?」






ひどく愛しそうに俺の名を


呼ぶもんだから。


もしかしたら、朱里も


俺に会いたいんじゃないかって。


会いに来てって言うんじゃ


ないかって。


だけど聞こえて来た声は。


ぽつりと呟く、


"諒司先輩"という言葉と。





『何でもない。ごめん、切るね』





ただそれだけだった。


きっと、目の前に


諒司先輩が現れた。


それで慌てて切った。





「んだよ、それ…」





朱里、お前は。


まだあいつのことを想うのか?


あんな奴のことを想ってるの?


今会いに行ったら、


朱里は困るのだろうか。


どんな顔をするんだろうか。


俺は。俺は。


ただ情けない醜態をさらして、


家に帰るしかなかった。