信じられねえ光景を前に。
見渡せば見慣れた姿があって。
「あれ、丘谷さんだろ?」
「え、朱里ちゃん?」
輝と力哉が俺を見る。
俺は一瞬頭が真っ白になって。
俺はこんなことをさせたくて、
丘谷に連絡したわけじゃねぇし。
こんな形で守ったと、
言ってほしくもない。
「先帰ってろ」
2人にそう告げ。
俺は走った。
丘谷が許せなった。
周りが許せなかった。
何でこうなる。
何で、何で…。
「朱里!」
中央で倒れている朱里と。
傍らで震えている中山が見えて。
「丘谷さん」
何をはき違えたら、こうなるのか。
なにを間違えたら、こうなるのか。
「俺はこんなこと頼んだ覚えはない」
「藤田、」
「こんなことして、朱里を守ってるとでも言いたいのか?」
これが、丘谷の守るということなら。
俺は任せられないと思った。
今まで何をやってんだ、と。
丘谷を責めると同時に、
俺自身を責めた。
朱里は肩を押さえながら立ち上がった。
痛いのか、顔を歪めて。
後ろを見ると、縋るように
泣いている中山がいて。
ごめんな、と。
頭を撫でた。
そして隣の石黒をアイコンタクトで、
もう大丈夫だと伝えた。
こいつらを巻き込んだのは、
俺かもしれないから。
だったら俺が守るしかない。
「あんたたちがしたことは間違ってる。さっさと謝って、さっさと帰れ」
咲坂が言ってた、
丘谷の仲良しの人らしき人に
そう告げる。
「丘谷さん」
丘谷とその周りを睨んで。
「次こんなことがあった時は、許しませんから」
言い切ってやった。
でも俺の心の中では、
次はない。
もう俺は朱里を奪う。
何をしてでも奪ってみせる。
こんなに苦しい思い、
もうさせたくないから。



