殴り返して来た奴もいたけど、


俺はそれでも構わず殴り続けた。


そして勢い余って、


端にいた咲坂の。





「とお…っ、や」




制服の胸ぐらを、


掴んで立たせて。


殴ってやろうかと思った。


周りの男は、里菜に触るなと


俺に掴みかかる。


だけど咲坂は、


自分を守ろうとしている男たちに、


大丈夫だから、と言い放つ。


それを聞いてすんなり身を引き、


咲坂にまた連絡する、と告げ、


ファミレスを出て行った。


俺は咲坂を胸ぐらを離し、


乱暴にソファに押し。






「何でこんなことした」





冷たく一言だけ呟いた。






「十夜が、高原さんをっ…」





「そんなことが理由であいつを傷つけたのか?」






理由は予想出来ていた。


だけど、どうしても許せなくて。






「お前1人でやったのか?」






そう言うと、


咲坂は首をぶんぶん振った。


そして、思いがけない一言を。






「丘谷さんたちと仲良しの人たちと…」






恐る恐るそう言って、


くすんと泣き始めた。


何でここで丘谷の名前が出んだよ。


咲坂が言うには、


もともと丘谷たちの仲良い女と


知り合いで、お互いの利害が一致して、


こういう事態を起こしたということ。


つまり、その女たちも、


朱里に恨みがあるってことか?






「信じらんねぇ」






「ごめんなさい。こんなこと、するつもりじゃ…!」





「なかった、ってか?いい加減にしろよ、お前」






溜め息をついて。


携帯を開いて。






「これでお前との繋がりはなくなるから」






そう言って咲坂に、


咲坂の連絡先を消去する過程を


本人に見せながらやった。


咲坂は黙って、


一筋涙を流した。






「お前も携帯出せ」





少し抵抗はしたものの、


最終的に携帯を出し。


俺は最高に最悪なことを。






「もう関係ないから」






そう言いながら、


俺は咲坂の携帯を、


思い切り床に投げ捨てた。