文化祭が終わって、
学校に行くと噂でいっぱいで。
俺を好きだったはずの朱里は、
いつの間にか丘谷と付き合っていた。
あれだけ有名なら、
噂になることもおかしくない。
だけど。でも。
今回のことは異例だろ。
てゆーか、朱里と付き合うって。
丘谷と付き合うって。
結局丘谷の思う通りになって。
俺がこういう風にした。
俺が招いた出来事だから。
でも、やっぱり。
悔しくて仕方ねぇ。
「十夜、彼女」
「…さんきゅ」
クラスの奴に笑って礼を言う。
俺だって朱里と丘谷が付き合った日に、
別れてるのに、噂すら流れてねぇ。
未だに、咲坂は俺の彼女の座に
居座ってる。
「十夜、あのね!」
そう言って、
2枚チケットを取り出す。
「今度の日曜にね、ライブあるんだって。チケット取れたから、一緒にどうかなって…」
この女の顔を見る度、
自分のしたことへの悔いが増す。
こいつに悪かったな、じゃなくて、
朱里に申し訳ないなって。
「いや、無理です」
「やだ、無理ですなんて。他人行儀な言い方して、どうしたの?」
くすくす笑う、
咲坂にイラっとする。
もう話もしたくない。
「十夜、じゃあ来週は?あのね、」
「咲坂。もうやめてくれ」
真剣な顔で言っても、
うるうるとした瞳を
引っ込めない。
俺はそんなものに、
なびいたりしないのに。
「もう俺とお前は、」
「あたし言ったよね?別れないって。ちゃんと聞いといてよ」
咲坂はそれだけ言って、
チケットを引っ込めると
教室へ戻って行った。