「でも、諒司」





「ん?」





「本当はジェットコースターとか乗れないよ」





「…嘘、」






本当に本当に。


諒司先輩って人は。


あたしがジェットコースターが


好きだって言ったから。


無理して乗ってくれたんだ。






「付け足すと、観覧車も苦手だし、動き回るのも本当は好きじゃない」





「何で、今日…だって、」





「朱里ちゃんのため、だったんだろうな」






静かにそう言う健先輩の言葉に、


枯れたと思った涙が、


また溢れて来て。







「諒司さ、朱里ちゃんのこと、一目惚れだったんだって」





「ん、聞きました…」




「初めて会った時さ、もう可愛い可愛いうるさくて」





健先輩は諒司先輩のことを、


色々話してくれる。


その話すべてが、


あたしのために諒司先輩が


してくれたこととか、


想ってくれたこととかで。


胸に染みて、心に染みて。


もうどうしようもなかった。






「でもあいつは、朱里ちゃんに会って変わったよ」





「あたしに、会って?」





「毎日学校来るようになったし。楽しそうにしててさ。俺らも感謝してる」






ありがとう、と。


そう言う健先輩は、


本当に諒司先輩が好きなんだなって


思った。






「送って下さって、ありがとうございました」





「ゆっくり休んで」





頷いて見せると。






「あ、諒司から伝言」





「え?」





「無理はするな。ちゃんと飯食え。」





「お父さんみたい」





「あ、それと」






少し間を置いて。


健先輩はゆっくり。







「ずっと、想わせて。って」






伝言を言ってくれた。


あたしはお辞儀をして、


もう顔を上げられなかった。


車が去って行っても、


なかなか家の中に入れなくて。


空を見ながら、たくさんのことを


思い出して。


幸せだった、と。


ありがとう、と。


夜空を介して、


諒司先輩に伝えた。


いつか、いつか。


あたしの想いが届きますように。


いつか、どこかで。


あなたが幸せになりますように。


またどこかで。


笑って、会えますように。