「麗華、ありがとう」





「大丈夫だった?何もされてない?痛いとこは?」





「大丈夫だよ、ごめんね」





「ほっぺ、腫れてるじゃん…もう、誰よ、こんな…」





麗華はあたしをぎゅっと


抱き締めた。


細い腕が、あたしを包む。


まるでお姉ちゃんみたいに、


髪を撫でてくれる。






「怖かったよね…」





「大丈夫。十夜がね、来てくれたの」





気付けばそこに健先輩もいて。


あたしは一応、こんばんはと


声をかける。


諒司先輩がいないからか、


十夜がいるからか、


少し居辛そうで。


だけど、十夜が来てくれたと


言うと。






「朱里ちゃんを助けてくれてありがとう」





十夜に向かって、そう言った。


だけど十夜は、その言葉に。





「朱里のためなんで」





と、返した。


またいつもの痛みが、


鼻の奥をツーンと通る。


こんなこと、


言われて嬉しくないわけない。






「本当、連絡くれてありがとう、藤田」





「中山にも連絡しようと思ったけど、あいつ絶対大騒ぎして泣き喚くだろ。うるせーと思ったからしなかった」




十夜の一言に、麗華も笑う。


確かに恵衣は、どんな姿でも


飛んできそう。


やっぱり仲良しだから、


十夜はよく分かってる。






「朱里、もう帰るよね?」





「そうだ。よかったら、送って…」





健先輩の言葉を。





「いいです。俺が送って行きますから」





十夜が遮った。


健先輩には申し訳ないけど、


十夜が何も言わなくても


断ってたと思う。


今は何よりも、


十夜と一緒にいたいから。






「ごめんね、麗華。夜遅くに呼んじゃって」





「何言ってんの。気にしないでよ」






あたしは泣きそうな麗華を


立ち上がらせて、


一緒に校門まで向かう。