雨のち晴






「何もないの?気持ち的にさ」





「気持ち的に…?」





「諒司先輩と、ずっと一緒にいたいの?」





ずっと、一緒に?


頭の中を、ぐるぐる回る。


この先、どうなるかなんて


まだまだ分かんなくて。


ずっと、一緒になんて、


考えられない。






「ていうか、最近藤田と里菜ちゃん見なくない?」





「確かに。喧嘩中?」





「いや、しなさそうじゃない?」






恵衣と麗華の話を聞きながら、


確かにと1人納得。


最近2人を見ない気がして。


それとなく、心配もしてたりして。






「藤田も、色々あったよね…」





色々、か。


あったなあ、色々。


でも、だめなんだな。


やっぱりあたしは、


十夜を想えないんだな。


これが、現実なんだよな。






「お待たせしました」





話の区切りのいい所で、


店員さんが料理を運んで来てくれた。


あたしたちは目の色変えて、


食事に食らいつく。


他愛もない話をしながら、


すごく楽しい時間を過ごした。






「じゃあ、また明日!」






食事が終わり、


少し話してばいばいする。


あたしは2人とは別の道。


日が沈むのが早くて、


まだ6時過ぎなのに外は真っ暗。






「寒っ…」





さすがに雪は降ってない。


桜が咲いていても、


温かいわけじゃなくて。


あたしはマフラーを巻き、


手袋をしようと鞄に手をかける。


片方はめて、もう片方はめようとして。


手袋が地面に落ちてしまった。






「はめにくいなぁ…」






最悪、と拾おうとした時。


上から声が。






「朱ー里ちゃんっ」






降ってキタ。


誰だか知らない。


男の人の声。






「え?」





あたしは手袋を拾い、


立ち上がって目の前を見る。


街灯がぽつん、ぽつんと


離れた場所にあって。


決して明るい場所ではない。


だけど状況は分かる。