「何暗くなってんだよ!って、俺が変なこと聞いたから悪いな。うん、ごめん」




諒司先輩は、静かに


あたしの頭に触れた。


ゆっくり撫でられる。


何か、もう。


心が痛いよ。






「朱里、誕生日おめでとう」





「ありがとう」





すぐ近くにいる先輩を見上げる。


月灯りか、街灯の灯りか。


微かに先輩の表情が見えなくて。





「可愛い」





その声と同時に、


あたしと先輩の唇が重なった。


2回目のキスは、


すごくすごく切なくて。


本当は泣きそうだったのを、


ぐっと、堪えた。


ごめんなさい、先輩。


早く、忘れるからね。


早く、好きって伝えるからね。





「あーもう、離したくねー」





何も言えないあたしを、


力いっぱい抱きしめて。





「よし、充電完了」




諒司先輩はそう言って


あたしを離した。




「あ、夕里ちゃんにお礼言っといて。プレゼントそこに置いてもらったの、夕里ちゃんだから」





夕里、そんなことは


ちゃっかりやってくれるんだから。





「言っときます」





「じゃあ、またな」





先輩は、名残惜しそうに、


あたしに手を振る。


離れたくないって思ってるのが、


伝わってくるから。






「諒司せんぱーい!」





大きい声で。





「今日はありがとーっ!」





そう叫んだ。


精一杯の、感謝を込めて。


少しの、罪悪感も込めて。


今日は本当に、


ありがとう、諒司先輩。