「諒司先輩、温かい」
抱き締められて、
彼を傍に感じて。
ほんの少し、
ドキドキしてるあたし。
「今日は早く寝るんだぞ」
「うん、分かった」
「ちゃんと暖めて。風邪引くから」
「諒司先輩も、ね」
ぎゅっと、力が入る先輩の腕。
こんなに、愛されてるって。
実感する。
「なぁ、朱里?」
「はーい?」
離れることが、嫌なのか。
あたしを離そうとしない、諒司先輩。
「キス、していい?」
さっきも聞いたそのセリフ。
別に聞かなくても、って。
本当は思うけど。
そういうとこが、
諒司先輩らしいなって思うから。
「どうしよっかな?」
「えっ…」
「うーそ、いいよ?」
少しいじめて、意地悪く笑って見せる。
やられた、と言いたげな顔で
あたしを見つめると。
「可愛い、朱里」
「そんなことばっか言うと、帰っちゃうよ?」
「帰したくねーんだって」
「もう…、ばか」
雪が降る、星空の下。
初めて唇が重なって。
諒司先輩の唇が冷たく冷えていて。
柔らかい感触があたしを満たして、
全身が温かくなった。
「初めて、なんだからね?」
あたしのファーストキスは。
諒司先輩に奪われて。
と、いうより捧げた。
もう、後戻りは出来ないの。
自分に、そう言い聞かせるように、
心の中でそっと唱えた。



