「ついてる、ほら」
諒司先輩は、自分のナフキンで、
あたしの口元をすっと拭った。
ステーキのタレが付いていたらしく、
ナフキンが茶色く染まってしまって。
「ごめんなさい、汚くしちゃって」
「可愛いんだって、そういうのも」
普通に、言うもんだから。
恥ずかしくなって、顔を
赤らめる。
何でそういうこと、
言っちゃうかなぁ。
「あ、ちょっとお手洗い行ってきます」
「あ、あたしも」
料理をほとんど食べ終えた時。
突然恵衣と麗華が立ち上がって、
トイレに行ってしまった。
「朱里ちゃん、あのさ」
深刻そうな面持ちの真太先輩。
「は、はい…?」
「恵衣、もらっていいかな?」
「も、もらってって…、え、あのっ…」
もらっていいかなってことは、
つまり、その。
「俺、好きなんだ、恵衣のこと」
いつになく真面目な真太先輩。
あたしは、嬉しくなって。
「はい!もちろんです!もらってください!」
「勇気出たわ、ありがとさん!」
屈託のない笑顔が、
すごく眩しくて。
あたしの頭の中ではもう、
真太先輩と、恵衣が隣を
並んでることしか想像出来なくて。
「お前は?健」
諒司先輩がふいに、言う。
健先輩は少し笑って。
「麗華にはもう伝えてある」
冷静に、そう言うから。
あたしたちは普通に、
大きな声で叫んでしまった。



