「じ、じゃ…またね」
結局里菜に言いくるめられて、
去って行く朱里。
何でもっと強気でいかねーんだよ。
そう思って、強気になる必要
全くないのかって。
あーあ、もう俺決めてるのに。
行動に移せないあたり、
くそだな本当。
今度こそ。今度こそ。
そしていつの間にか、
文化祭で。
11月で。
俺はあれから、
何度里菜に伝えようとして、
言えずにいるのか。
「藤田、お前も手伝えって~」
「今休憩入ったばっかだろうが」
俺らのクラスは、
担任が出し物する気満々で。
文化祭定番?の、チョコバナナ。
俺はなぜか朝からぶっ通しで、
作らされ続けていて。
やっと休憩に入ったけど、
もう終わる時間。
廊下では後夜祭を楽しみにする
声が聞こえてくる。
教室を出ると、
遠くに見える朱里の姿。
と、同時に震える携帯。
出るのをためらう。
本当はもう、話もしたくない。
「何?」
『あ、十夜?何してるの?』
「別に何も」
周りのやつらは、
だんだん外に出て行く。
少なくなってきた教室内。
『後夜祭、一緒に見ようね』
「里菜、話あんだわ」
自分の声が、反響して聞こえる。
もう、覚悟を決めようと思った。



