「十夜、あたしっ…」
すると朱里が、
切羽詰まったような顔で
俺を呼んで。
どうした?
そう思ってた時に。
「朱里、ごめん!遅くなった!」
丘谷が現れて。
はいはい、そういうことですか。
今日もかっこよくいらっしゃいますね、
丘谷さん。
「っと、お取込み中だった?」
「いや、俺が邪魔っすね。すいません」
もう、丘谷の言葉に
余裕すら感じてしまう。
俺朱里と約束してるし。
横取りすんなよ。
そう言われてる、感じで。
あ~、負け。と思った。
戦意喪失。
邪魔者は俺。
消えます、すいません。
俺は足早に教室を出る。
なんだよ、やべーじゃん。
朱里取られかけてるし。
俺のもので置いておきたいのに。
あんなやつに取られるって。
どうよ、この状況。
もう俺は必死で。
どうしたらいいか、
分からなくて。
俺が女だったら、
泣いてるんだろうなとか。
そんなことを考えながら、
心の中では泣いてた。
泣き喚いて、心に穴がぽっかり。
どうやって埋めよう、
もう限界なのか。
朱里を見てるだけが、
限界なんだろうな。
そろそろ、ちゃんとしようかな。
俺は1人で、
心にケジメをつけた。



