雨のち晴






「…っざけんな」





何だよ、丘谷ってやつ。


イケメンだからって、


何してもいいってわけじゃねーぞ。


人の女、いや好きな女に、


勝手に手出すんじゃねー。


俺の心の中はもう、


始業式の段階でくすんでしまっていた。





「まじで疲れた」




9月半ば。


担任に雑用を押し付けられて、


放課後に居残り。


やってらんねー、って思いながら


教室に帰って鞄を取る。


ふと人の気配がして。


隣のクラスを覗いてみた。


そこにいたのは。


夕日が差し込む教室で、


1人誰かを待っている朱里で。





「朱里?」





俺は声をかけずには


いられなかった。





「十夜、」




「何やってんだ、1人で」




そんなことを尋ねておきながら。


俺を待ってたって、


言ってくんねーかなって。





「あ、うん。ちょっとね。十夜こそ、何してたの?」




「担任に雑用させられてた」




そう言う俺に。


少しはにかんで。


何かむかつくくらい、


すっげえ可愛くて。


綺麗で。


どうしようもなくて。






「最近可愛くなったな」



なんて。


ぽろっと、出た、想い。


やべー、そろそろ分かるかな。


伝わったかな、俺の気持ち。


なんてハラハラしてるのに。





「な、何言ってんの。びっくりしちゃった」




朱里は少し顔を赤らめて、


そう言うだけだった。


なーんだ、ちっ。


いじける俺。


あはは、ばかみたい。