雨のち晴





テストが終わった日。


俺はノートを返しに行こうとして。


廊下に響く丘谷の声が聞こえて。


瞬間、体が強張った。


何であんなに名前呼んでんだ。


どういう関係?


あいつの何?


何だ、俺。


いつもこんなんじゃねーのに。


汚ねえ、嫉妬か?


そんなこんなで、結局


ノートを鞄にしまって


黙って帰った。


家に帰っても、携帯を握りしめて。


電話して聞いてやろうかとか、


メールしてやろうかとか。


そんなことを考えて、


隅っこに携帯を投げる。


あー、くそ。


俺がそんなことする権利なくて。


あいつが誰と関わろうが、


俺には関係なくて。


でも、本当は。


俺の中で閉じ込めておきたい。





「朱里」



球技大会の朝。


俺は朱里が登校してきたのを確認


すると、すぐ教室に向かった。




「おはよう、十夜」




「これ」




何もなかったかのように、


ノートを渡す。


借りた時には、次の約束とか。


そんなこと思ってたけど。


何でこんな感情で、


渡さなきゃいけねーだよ。


気を引きたくて、


朱里の好きな飲み物まで付けて。





「わざわざ持ってきてくれたの?」




「本当は昨日渡すつもりだったけど、渡せなかった」





嫌味を込めて、伝える。


あの男と絡んでたせいで、


渡せなかったんだぞって。


そういう意味を込めて。







「お前らさ…」




何か、何も知らねえって


感じの中山も石黒も気に食わなくて。





「やっぱ何でも。今日はライバルだからな。負けねえぞ」





巻き込もうと思ったけど。


やめたやめた。


考えるの、やめた。


球技大会のことに集中するか。


俺は心の中で自分をぶって。


朱里たちの前を去った。


あーもう、何だよ。


欲しいのに、手に入らねえって。


何なんだよ。


悔しくて悔しくて。