朱里が、今年は補習じゃないと


いいね、なんて言うから。





「今年も補習だったら、またあいつらから朱里借りる」





思わずそんなことを言ってしまう。


困らせたくて。


俺が朱里をこんなに必要と


してるってこと、


知らせたくて。





「朱里も勉強中?」





『寝ようかな、眠たいし』




朱里は頭がいい方だから。


勉強しなくても


絶対大丈夫。




「俺も頑張るから、朱里も頑張れよ」




でも一緒に起きていたくて。


朱里もやってるって思ったら。


俺も頑張れる気がして。




『うん、頑張る』





一緒に起きてようね、って。


言われてる気がして。





「電話して悪かったな」





『ううん、全然いいよ』





「じゃあ明日ノート取りに行くから」





『うん。待ってるね』




デートの約束か!


俺は1人で突っ込みながら。


切ろうとする。




「じゃ」




だけど、朱里の声は途切れなくて。






『あっ、十夜。ちゃんと勉強しなきゃだめだよ!』





まだ切りたくないなって。


思ってくれたのかな、って。


考えたりして。




「分かってる。ちゃんとする」





『でも眠かったら無理、しないで』




俺の冷静さが、失われそうで。


怖くてたまんねえ。





「朱里もな。無理しないで、ちゃんと寝ろな」





『じゃあね、十夜』





「おやすみ」





ツーツー、と。


機械音が聞こえて。


あ~だめだ。


ちょっと休憩。


心を、落ち着かせよう。


ノートを借りる約束しただけで。


それ以上のことは何もなくて。


だけど、それが嬉しくて。


嬉しくてたまんない。