「ったく。それでも教師かよ…」




フジ子っていつもそんなんで。


適当っていうか、何て言うか。


手当てとか上手いし、


休ませてくれんだけど。


本当に、それで保健医やってて


いいのかってくらいな適当ぶり。


ま、別にいいけど。


そう思って朱里を見ると。






「…、朱里」






「…えっ」





俺の肘をずっと見ながら、


顔を歪めて。


今にも。






「何泣きそうな顔してんだ」






泣きだしそうな、


愛おしいくらいな顔で。







「痛ぇのはお前じゃなくて、俺なの。泣く必要、ねぇだろ」





こいつは人の痛みでも、


自分の痛みと受け止める所があるけど。


本当の傷まで、


受け取ることねえだろって。


けど朱里は、なぜか一筋だけ


涙を流していて。


俺は思わず。


強引に拭いてしまった。


お前の泣き顔に、


俺はころっといっちまいそうで。


怖くて、怖くて。







「仕方ねぇ、か」





フジ子がいないんじゃ、


手当てのしようもないし。


ましてや、ここにいると


俺が危ない。


だからもういいや。






「ちょっと、十夜!…怪我、どうするの?」




保健室のドアに手をかけ、


外に出ようとする。


すると、朱里は。





「こんなのすぐ治る。大丈…って、おい!」





強引に。


俺に何も言わさず。


腕を引っ張って、


イスに座らせ。


自分はいつもフジ子が座っている


イスに腰をかけ。