「補習長い間お疲れ様」
「ん」
「もう夏休みも終わっちゃうね」
「ん」
頭ん中はずっと。
朱里にキスしたことと、
咲坂に見られたことが、
ぐるぐる。
適当に返事してた俺に。
いつの間にか、
朱里は怒ってて。
「何でそんな返事なの、もう」
「あ、いや。別に」
別に、何も?って?
違う、もっと。
こいつにはもっと。
「適当に見せかけて、実はちゃんと聞いてたから」
温かい言葉を、
かけてやりたくなんだよ。
咲坂なんて、
どうでもいいけど。
朱里は違うから。
「じゃあまた明日、学校でね?」
「おう、じゃーな」
いつも別れる場所で、
手を振り合う。
少し歩いて少し振り向く。
送ってやるよ。
そう言えたらよかった。
そう言いたかった。
けど、いつも。
彼氏じゃねーのに、
送るとか言ったら。
朱里はどう思うのかな、って。
そんなことばっか考えて結局前に
進めてねーの、俺。
完璧だせえ。



