「起きろ」
起きない。
「起きろって、ばか」
起きやがらない。
てか、目が。
朱里の唇に奪われる。
机に伏せていて、
顔だけ見えて。
朱里の唇が。
俺を見ていて。
「朱里…」
すげえ可愛くて。
どうしようもなくて。
俺の行き場のないこの想いが。
「ごめん」
どこにもぶつけられなくて。
まだ子どもだったって、
言い訳で。
寝ている朱里に。
そっと、キスをした。
過ちだなんて気付かなくて。
俺はキスをした後に、
高揚感でいっぱいで。
張り裂けそうだった。
なんならもう1回。
そう思っていた時。
「嘘……」
後ろで声がして。
俺は、もうパニック状態。
やべえ見られた。
しかも寝てる女にこっそり
キスする場面。
俺、ダサいじゃん。
そう思ったけど、一応音がした
方を振り向いてみる。
そこにいたのは。
「十夜くん…」
「咲坂…」
6月に2回、7月初めに1回、
俺に告白してきた咲坂里菜が
立っていて。
「何、で…」
「ちょ、黙れって」
思ったより低い声が出て。
泣きそうな咲坂を見て、
やべえと思ったのは事実。
「何やってんの?」
「十夜くんこそ、何やってんの…?」
ごもっともです。
俺こそ何やってんのだな、うん。
間違いない。



