「…そうか。大儀であった。」 少し歪んだ彩夏の微笑みに、礼はそれだけしか言えなかった。 彩夏が部屋を出ると、寝台に入った。 なかなか寝付けない。 暗い部屋で、寝っ転がりながら、足や腕を天井に突き上げて眺めた。 なぜ気づかなかったのだろう。 こんなにも違うのに、と不思議に思った。 そうこうしているうちに、瞼が重くなってきた。 空の月が半分欠けた日のことだった。