突拍子もないことを考えて、ふと気付く。

自分が大人として何一つ独立できていないことに。


まともな進路も決めないまま大学を卒業し、就職試験に向けて懸命に努力する羽美の足を引っ張ることしかできていないのではないか。

考えれば考えるほど、最低だった。


そんな状態で指輪を贈っても、彼女を守っていける自信が無い。

思いついたのも実行したのもいきなりのことだった。


独立しよう。

彼女に何も告げることなく出ていけば、彼女は哀しむだろうか。
自分のことなど忘れてしまうだろうか。

それでもよかった。
羽美が幸せなら、海月も満足だ。


たとえそこに、自分の姿が無くても。