夕食の片づけもそこそこに、彼女は本棚からある一冊の本を取り出す。

表紙が擦り切れてボロボロになっているが、ブックカバーをかけようと思ったことはない。

そんなことをすればこの本の価値が薄れてしまう。


表紙には満天の星空。
海月がずいぶん昔の誕生日にプレゼントしてくれた、あの写真集だ。

ページをめくれば、世界各地の星空が目に飛び込んでくる。


海月は星がとても好きだった。
彼の話を聞いているうちに、羽美にもそれは影響した。

同棲を始めてから2人で少しずつお金をためて買った望遠鏡を、羽美はベランダに持っていく。