頬を付けたテーブルが、熱くも冷たくもない無機質な温度を羽美に伝える。

独りきりの誕生日、独りきりの夕食。
5年間続けてきても未だに慣れないのは、常に不安が付きまとうからだろう。


羽美は海月が他の女性の所へ行ったとは思っていない。
彼女が考えているのは、彼が絶命しているのではという可能性だ。

縁起が悪いにも程がある。
けれどもどうしたって考えてしまう。


彼はもう、生きていないのではないか。


「…まさかぁ」

のんきに語尾を伸ばしてみたものの、その不安は簡単に拭えるものではなかった。

テーブルの上で湯気を立てるシチューは、海月の好物だった。
海月がいなくなってから5年間、彼女は誕生日にはいつもシチューを作っている。

そうすることで寂しさを紛らそうとするのは、滑稽なことだろうか。