羽美は海月とその木を交互に見つめ、首を傾げた。
「だってあそこじゃ、桜が見れないよ?」
「見れるよ」
彼は羽美の手を引っ張って大木の根元に座ると、ふんわりと春の空気をまとった笑顔を向けた。
「遠くから見た方が、綺麗に見えるよ」
彼はいつもそうだった。
羽美が失敗をしても決して怒らない。
それどころか優しく失敗をくるんで、成功に変えてしまう。
そんな不思議な力を海月は持っていた。
「そうだね」
人もいないし、桜も咲いていない。
自分の想像していた花見とはまったく違ったけれど、一生思い出に残るだろう花見だった。
「私、今日のこと忘れない」


