しどろもどろ。

ホントに昼に見た彼女とは大違いの反応。
嘘みたいだよ。
目の前にいるのは無表情の愛澤さんと同一人物なんだよ?

可愛かった。
笑った顔が一番いいなとは思うけど、今の愛澤さんも可愛い。

紳士心に背くけど、俺だって男だ。
何故か愛澤さんを困らせたくなる。
今は安静にしておかないといけないのに。
無意識に出る言葉はその気にさせるもので……ホントに可愛いこと言うな。

体調悪くなかったらもっと攻めてたと思う。
もっと彼女を赤くさせて、意地悪して、でも優しくして……彼女の秘密を無理に聞いてたと思う。



「恥ずかしくなっちゃった?」

『え、ち、違うよ!恥ずかしくなんかないし……!』



ああ、俺ってバカだ。
分かってながら彼女を困らせてる。
無視されてないのが嬉しくて、態としてる。
普通の女の子になってる愛澤さんが可愛いんだ。

顔を赤くして否定しても、嘘がバレバレ。



「じゃあ言えるの?」

『……名前くらい言えるよ!』



バカだ。バカだ。バカだ。
向きにさせて……。
名前呼ばれたくらいで……。



『と、とら、とらさわくん……』



…………重症だ。

ないって思ってたのに。
ギャップってのは本当にすごい。

俺、たぶん彼女が好きだ。