彼女は顔を赤くさせ、戸惑っている。
さっきは普通に呼べたのに改めて呼ぶとなるとなぜ簡単に呼べないのだろう?

てか、俺にしたら彼女が俺の名前を知ってたのも驚きだった。
愛澤さんは人のことにあまり関心を持たないと思ってた。
俺のことはしつこい男とでも思ってたかもしれないと。
しつこく接した効(かい)があった。



「呼んで?」



今度は意識して甘く囁いた。
俺が女の子相手によく使う手。
お願いする時はこうするとたいていの女の子は頬を赤く染め頷いてくれる。
一応、俺はモテるしそういうことは得意だ。



『あ、あの……』



けど今の愛澤さんには刺激が強すぎみたいだ。
さらに顔を赤くさせて、目が泳いでる。
パニック状態なんだろう。
これじゃあ、話を続けられない。
体調不良の上、こんなことしたら本当に倒れるかも……。
ちょっと間違ったな。



「ごめん、無理しなくていいよ?」

『いや、その、何て言うか……意識してなかったから、その、……呼ぶのが嫌とかじゃなくて』