何故彼女は黙らなきゃいけないのか。
うっかり漏らしてしまってはいけない秘密を守るために、人と関わることすらしないのは余程のことだ。
それは早瀬も知っていて、お互いそれを守るために他人のフリしていたんだ。
そこまで、
「愛澤さんがそこまでして隠そうとしているものは何?」
する必要がある秘密なの?
『……言えない』
「……」
『こうやって、言うことになるのが恐くて無言を通してたの』
「……でも愛澤さんは自ら俺に話したんだよ。うっかり零しちゃったわけじゃない」
『それは……』
ここまで聞いたんだ。
ここで引き下がられては困る。
でも彼女は困った顔して、目を泳がせる。
無表情じゃない。
素の彼女。
色んな愛澤さんを見る度、ドキドキする。
笑った顔。
怒った顔。
泣いた顔。
困った顔。
知りたい。
「早瀬と関係があるのもクラスのみんなはもう知ってる」
『バカしちゃったからね』
もっと。
「本当の愛澤さんを知りたい……」
『!……あ、えっと』
これは本心。
女の子を喜ばす計算でも紳士心でもない。
純粋に。



