「僕は本当のこと言っただけなんだけど」
『それでもダメ。寅沢くんが傷つくでしょ!』
海璃くんが傷つけんじゃなく愛澤さんが俺を傷つけたんだけど……。
「そっかぁ……。じゃ、僕も謝っておいた方がいい?」
『もちろん』
海璃くんは子犬みたいな愛澤さんに甘えた声して言った。
愛澤さんはお姉さんらしく言う。
………この姉弟、甘甘だな。
ムカつくぐらい甘いぞ。
海璃くんの言葉に愛澤さんが優しく応えるのが気にいらない。
海璃くんは愛澤さんが甘いのをわかって計算して甘えているように見える。
確かに中学生っぽいけど、まだ顔もあどけないし、男なのにかわいいと思う。
でもなんかイラッとくる……。
「寅沢さん、ごめんなさい」
「……おう」
いや、海璃くんは悪くないと思うんだけど。
素直な子供って罪だな。



