酒臭混じりの息に乗せられた、金森の言葉……。





「子供ができないならば、楽しむしかないでしょう?」







………一瞬で…嫌悪感が憎悪に擦り変わる。





「っ――触らないで!!」




金森の手を激しく叩き、跳ね退けた。



渇いた金森の笑い声……私は、部屋を飛び出した。













冬の日照時間は短い。




午後五時前であるにも関わらず、外は冴え冴えとした冷気が充満していた。






闇夜かがった黒褐色の空、停滞している厚い雲は、何かの予兆を警告するかの様に静かにうごめき、この土地を、私の心を飲み込む。




吐き出す息の白さに、今更ながら身震いをした。




―雪が降るかもしれないな―




そんな夫の声が、耳の奥から響いた。





震える身体を肩掛けで包み、歩き出す。



歩きながら足元に視線を這わせると……途端にまた、涙が溢れた。







……取り残されている様な気がした。




私だけ、別世界に立っている様な気がしていた。



誰も居ない、一人ぼっちの世界に。







.