古い家独特の、重く張り詰めた空気。


柱時計の針が刻まれる音だけが、今、ここに時間がある事を確認させる。



握り合う手…咲子さんの白くて細い手は、雪を思い出させる。



こんな冷たい想いを抱えながら、この人は…何年過ごしてきたのだろう。



温め合う相手を忘れてしまう程に………。







「僕の手は、温かいですか?」

「………ええ、とても…」



咲子さんは、静かに黒い瞳を閉じる。




「この温もりを、あの人にも感じたでしょう?それだけを思い出して下さい」




「暖かさ………」



うなづき、僕は咲子さんの冷たい手を更に強く握った。






冷たさと共に伝わってくるのは、後悔の念。



自責の念。




これが全て、彼女を縛り付けていたのだ。



父もそれを知っていた。





だが、それがあまりにも強すぎて、おそらくどうしようもなかったに違いない。




だから、今日なのだろう。




まだ、間に合う。





咲子さんも……あの人も…。





そうでしょう?父さん。