「大事なのは、楽しんで役になりきることだ! あ。これ俺の名言な」
名言と言い切る葵を軽く小突く。
でも、そのおかげで疲れは消えた。
何気に気遣ってくれたのか......?
葵と共にスタッフさんの集まっている場所へ向かう。
そして、いつも入り口に立っている楓を探す。
「あれ......?」
口に出すと、葵が不思議そうに聞く。
「どうした?」
「楓が......いない...?!」
どこを見渡しても楓はいなかった。
便所...とか?
そのときは深く考えなかった。
まさか、楓があんなことになっていたとは知るよしもなかった。

