楓の耳元で、フッと息を吐く。
「ッー?!」
顔は苺のように真っ赤で。
また顔を近づけると、楓はギュッと目を瞑った。
俺の唇と楓の唇は―――
「.........あ、れ?」
先に口を開いたのは楓。
訳が分からないという表情で俺を見る。
はい。
俺は、寸前で止めました。
だって、キスしたら止まらなくなるだろうし。
何より、実は嫌いだったとか本当にへこむんで。
「さ、帰るか」
台本と楓のバッグを持ち、立ち上がる。
「へ......あの......」
「ん? もしかして、して欲しかった?」
中々立ち上がらない楓に、意地悪っぽく聞く。
すると楓は顔を真っ赤にフルフルと震えて。
「そんな訳無いでしょーーーッ!!!」
大きな声が部屋全体に響く。
近所迷惑だろ。

