葵と別れて、家に帰る途中。
「あ。台本忘れてた......」
「チッ」と舌打ちしつつも事務所へ向かう。
あと少しで家に着くのにな......。
自分が忘れたのがいけないんだけど、こういう面倒臭いこと大嫌い。
現在時刻20時。
18時に葵とファミレスに居たから、結構経ったんだな......。
事務所にはまだ仕事をしている人が居たので、明かるかった。
部屋へと入ると、規則正しい呼吸が聞こえた。
「......奥のソファから?」
警戒しながら奥へと進む。
テーブルのある部屋からの明かりが漏れて、ソファで横たわっている彼女の顔が微かに分かる。
「こんなところで寝るとカゼ引くだろ......楓?」
しゃがんでそう言うと「ん......」と唸った楓。

