荒々しく玄関のドアを 開こうとした僕は とってに手をかけ思い止(とど)まる。 自分の、このドロリとした 暑い熱と金属製であるとっての 冷たい温度差に 苦しくなってしまったようで。 急に腹が立って目が霞む。 答えは、すぐ目の前で消えた。 「好き」は消えた。 僕は、なんのためらいもなく 冷えたとってに手をかけた。 「風邪」 嫌みたらしく問う声が聞こえた。 「そう、風邪」 分かっているから、簡潔に答える。