『…………勒天』 「はい」 『内親王が、明日、伊勢に出立するそうだ』 「はい」 『鈴鹿山脈の中腹に仮宮を建て、そこに住むらしい』 神無は揺れる篝火を見つめながら、顔色一つ変えずに言った。 『内親王凛子を、この天津見宮に連れてこい。怖がらせずに』 「どうやって…」 勒天を見て、神無は言った。 『人に化ければ良かろう。鬼斬衆も来るはずだ、気を付けろよ』 「はッ!」 勒天が異界に戻ったのを確認すると、神無は身を翻し、東ノ宮に向かった。