◆憐





“憐はあたしを、どう思ってるの?”


まさか華梨から、そんな質問をされるなんて思ってもいなかった。
……というより、されることを恐れていたと言った方が、正しいのかもしれない。

今の時代において、身分の差なんて言い方はおかしいけれど、確かに感じる華梨との埋められない差。

気にしないようにしてたし、そんなの関係ないと思っていたけれど、だんだん浅井家の財力だとか歴史的な背景だとかを知っていくうちに、そんな簡単に割り切れるものではないのだと、いつの間にか悟っていた。

厳しい家。
両親の期待に沿うように、誰から見ても恥じないように、自分を押し殺して偽って生きてきた華梨のつらさは痛いほど伝わってきたけど、それをしなきゃいけない理由がそこにはある。

華梨だってそれをわかっているからこそ、苦しみながらもそれをこなしてきたはずだ。


無駄に強がりで、素直じゃなくて。
そう簡単に弱音なんか吐かない。

本当はそんなに強くなんか無いのに、いつもひとりで抱え込んで自滅するんだ。


そんな華梨だからこそ守ってあげたいのに、俺はあまりにも無力だった。

いつか、華梨の傍にいることさえ許されない日が来るかもしれない。
ただ話を聞いてあげることさえ、できなくなるかもしれない。

そんな未来を考えて、自分の気持ちを押し込めた。
言いさえしなければ、まだ引き返せる。このままでいいなら、華梨の傍に居られる。

何より俺は、自分が傷つくより、華梨を傷つけるのが怖かった。


もう、泣かせたくなかったから。