卒 業

もし、君が……

今、俺の為に泣いてくれているなら
　
今、一時……一瞬でいいから
　
　
　
　
気がつくと、俺は彼女の肩を抱いていた。
震える手が、手に力が篭っていることを、自身に知らせる。
　
本当は、力一杯抱き締めたかった。
　
隣で泣く君を。

この両腕で。
　
だけど、できなかった。
　
今抱き締めてしまったら
自分の想いが全部溢れてしまうから。
　
そんなことをしたら。
　
この想い全てを

君はきっと受け止め切れず

また一人泣くだろう
　
そんなことはさせたくなかった。