「そういえば、祐季くんどう?大きくなった?」
「あ、今日連れて来たのよ。祐…祐季?!」
 
隣にいたはずの息子が、居なくなっていたことに気付いた。
 
「私、探して来る!」
「ちょっ琉?!」

血相を変えて走り出した私を、彼女は呼び止めようとしたが、私は止まらなかった。
 
心臓が早鐘を打つ。
 
あの子だけは……
あの子だけは失いたくない……ッ
 
何かにつき動かされるように、誰もいない廊下を、私は駆け抜けた。