「あ、そこそこ。そこの居酒屋ー」
 
小ぢんまりとした、小さな居酒屋。
そこが私のお気に入りの店だった。
タバコが昔から苦手な私は、個別の部屋式の禁煙席があるこの居酒屋が気に入って居た。
ここなら、煙にむせることもなく、他人に酔っ払ったところを見られることもない。
 
「こんなところがあったんだ。」
「ぅん♪お気に入りなんだ」
車を停め、外に出る。
少し肌寒い風が頬を撫ぜる。
 
カラン、コロン。
レトロな鐘の音と共に開くドア。
まるで、古い喫茶店のような雰囲気が漂う。
足音が奥からしたかと思うと、女性店員が、いらっしゃいませ、と言いながら出て来た。