どうしてそんな気持ちになったのかは分からない。

あの、大好きな背中を見つめたせいなのか。
彼が、私よりも一歩卒業してしまったと感じたからなのだろうか。

 
もう少しで私が呼ばれる。

このままでは、立ち上がる事ができなくなってしまう。
そう感じた私は、不意に頭を下げた。
 
ぽたり。
 
一つ、落ちた雫によって、自分が今、泣いている事を知った。
 
「藤 琉」
「…はい」
喉から絞り出すように、私は返事をした。

祐也はいつの間にか、自分の席に戻って来ていた。