――恵理夜にとって、思い出の場所とは、ここだった。 この部屋は、かつて恵理夜の両親が使っていた部屋だった。 本当の部屋は離れにあるのだが、恵理夜が生まれ、離れが出来るまで使っていたのがこの部屋だったのだ。 そこは、恵理夜の部屋に成るはずの場所だった。 しかし、恵理夜はそれを拒んだ。 両親の思い出の部屋で暮らすというのは、出来なかった。 まだ、両親を思い出にすることができない恵理夜にとって、あまりに辛い重荷だったのだ。