十二年前―保育園児だった。

あれは私が年中組のときだったかなぁ。
そうそう、名前は確か『タンポポ組』だったなぁ。

保育園の組って何で花の名前がつくんだろうって思わない?
それも今だから疑問に思うんだろうけどね。

あの頃はそんなこと考えもしなかったよ。
思考能力が幼い故に勘ぐるって事もしなかったんだけど、
何より純真だったんだよね、今より。

 男の子も可愛いんだよ。
お庭のタンポポを摘んで、
花束にして私にプレゼントしてくれた子もいたし、
ジュースの空き缶に挿してずーっと眺めていた子もいたんだよね。

そういえば大人びたやつもいたなぁ。

 「タンポポ取ったらかわいそうだよ。
  採ったら死んじゃうんだよ。
  みんなで見守っててあげようよ。」

とか言って、毎日お庭に水をあげていたやつが。
私もその通り!って思うけど、
子供らしくないといえばそうなのかも。




 今でも好きなんだけど、
子供ってお菓子大好きじゃない?
特に保育園でもらうおやつは一段と嬉しかったなぁ。
それで、おやつにまつわる思い出があって・・・。



 子供心にも憧れの気持ちってあるじゃない?
その憧れの的だった男の子が私にもいてね。
みんなが先生からひとつずつドーナツをもらったときに、
その男の子に自分の分をあげちゃおうって思って、
思い切って
「これあげる。」
ってドーナツの袋の端を持って、
彼の前に差し出したの。

そしたらその子・・・たっ君だったかな?
彼が「じゃあこれあげる。」って言って、
彼の分のドーナツをくれたの。
お腹が減っていた私は結局二つとも食べちゃったんだけど、
あの優しさには感動したよ。

たっ君への憧れは、
小さな初恋の思い出って感じかな。
意中の男の子の存在で、
なんだかうれしいことがいっぱいだった。
毎日が楽しかった気がする。
まぁ実際に覚えてることといったら、
ほんの一握りなんだけどね。