込み上げる郷愁の想いと共に、正常に機能し始めた脳のおかげで、僕は腰の違和感に気付いた。


一晩中身体を酷使する体勢を強いられた後遺症だ。


昔はこんな痛みなど、気も留めなかったというのに。



こんなところにも、月日の経過を思い知らされる。



疲労を溜め込んだ腰を無意識にさすりながら、

僕は窓の外の景色に、ほんのひととき、ほんのりと甘く染み渡る感情を愉しんだ。



決して愛した町ではなかったはずなのに。


時間の流れとは、無条件に懐かしさに浸る想いを与えてくれる。



ふと、いつもの癖で、腕についた時計を見やれば、時刻はまだ午前7時過ぎ。



あの日から一日も離れず、僕の腕に居座り続けるこの腕時計に、力無い笑みが漏れる。


聞いたこともない、嘘臭いブランド名が彫られた、安っぽい代物だ。



今の自分には、到底不似合いな。


追憶の日々を忍ばせた、古びた時計――