最後は、ほとんど自棄のような独白だった。



どうしても、今の彼女の前では、プライドを取り繕う気にはなれなかった。


本当は、彼女の前では完璧でいたいはずだったというのに。



自嘲混じりの告白に、彼女の返答を待つ。


彼女は、胸に埋めていた顔を上げて、抱き締める前までと変わらない真摯な瞳で、僕を見上げた。




「愛してるの。何度も言わせないで。愛してるから――」


そう言って、背伸びした彼女の唇が、僕の唇に触れた。


そしてまた僕は、泣いた。



「お帰り」


唇が離れた後、彼女が微笑む。


そこには、あどけなさの中に、時の流れを実感させられる、妖艶な表情が織り混ざっていた。



「ただいま」


右頬の涙を止められないまま、僕は答えた。



――あぁ。


僕は、彼女の元に帰ることを許されたのだ。



「もう二度といなくならないでね」

「もちろんだ」


もう二度と、離してなんてやらないから。